『三姉妹とその友達』福永信

  • 著: 福永 信
  • 販売元/出版社: 講談社
  • 発売日: 2013/2/22

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戯曲とその戯曲のノベライズ、そしてそれとは独立した別の短編の三つが収録された本。
しかし最初の戯曲からして曲者で、そもそもタイトルからして『三姉妹とその友達』とありながらも三姉妹も友達も登場しない。冒頭の配役の説明で三姉妹が演じなければいけないと書かれているだけだ。
しかし、この戯曲は四兄弟の物語で一人足りない。さらには、三姉妹が四兄弟が登場するの演劇をどうやって演じるのかというような展開になど進むわけもなく、戯曲編では四兄弟の物語が描かれるのだが、これまたおかしな話でそもそも地の文がなく会話の文しか無い。
さらにはその会話は、四兄弟の誰かが話している会話ではない。
とこんなふうに説明をしても多分意味のないことで、この本がどんな本なのかは実際に読んでみてもらわなければ理解できないだろう。もっとも読んだところで理解できるのかはわからないが。
で、その後につづくのが「そのノベライズ」と題された物語で、これはその前の戯曲を文字通り小説化した話だ。で、これを読めば先の戯曲でどんなことが行われていたのかおおよそ理解できるようになるのだが、これを読んだところで果たして本当に理解できるのかはわからない。
そんないつもどおりの福永信の物語を読み終えた後で最後に登場する短編があまりにも不意打ち過ぎて驚く。多分いままでの福永信の小説の中で一番わかり易い物語なのだ。しかもきれいにオチまで付いている。
福永信が読者に歩み寄った結果だといえばそうなのかもしれないが、このあまりにもわかり易すぎる短編を読み終えて、本を閉じると、不安に苛まれてしまう。

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