あらゆる動物に感染する新種のウィルスが蔓延。根絶も不可能なため肉を食べることができなくなった未来。唯一の食肉は人間。ということで人肉食が合法化され家畜として飼育される。
物語が進んでいく過程で家畜として生まれた人間が屠殺され解体されていく様子が丁寧に描写されていく。それは言い換えれば牛や豚が店で売られている肉に加工されている現在の有様そのもので、それが牛の代わりに人間に置き換わっただけに過ぎない。
主人公は食肉処理工場で働く社員。三人称視点でありながら主人公のことは「彼」としか呼ばれない文体が面白く、主人公越しにのぞく世界を読みながら一方で主人公の感情がダイレクトには伝わってこないところがミソだ。
いっぽうで、主人公は子供を亡くし、妻はそのことから心を病み、実家に帰省中。主人公の父親は認知症になり施設で生活していることが次第明らかになってくる。読み手としては主人公に同情したくなる。
このあたりが実にうまく、それ故にラストの展開が効きまくっている。唖然とする結末だった。
読み始めて思い出したのは川島誠の「電話がなっている」で、こちらも人肉をあつかった近未来ディストピア小説だ。同じ題材でありながら、向かう方向は正反対に近く、『肉は美し』は読者を放り投げるのに対して「電話がなっている」は読者を突き落とす感じだ。
未読の人は是非読んで貰いたい。

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