一ヶ月ほどの短期間の間に、日本SF短編アンソロジーが復刊も含めてだが三冊出た。しかも、テーマ別のアンソロジーではなく、年間ベストのアンソロジーだ。
そしてこの中で重複しているのは石原藤夫の「ハイウェイ惑星」と荒巻義雄「大いなる正午」の二編。さすがにこの『60年代日本SFベスト集成』が復刊することなど、作品選択の時点ではわかりようもなかっただろうから、重複が二編だけだったということはそれだけ選択肢が多かったともいえるけれども、あらためて筒井康隆の選択した作品をみてみると、傑作を選んだというよりも筒井康隆の独自の視点というか筒井康隆の色合いが結構出ているのがわかる。
だからといって、傑作を選ばなかったのかというとそんなことはないのだが、誰もが認める傑作を選びつつも、少しひねった作品も採用しているのだ。特に、半村良の「H氏のSF」とか星新一の「開放の時代」とかがそんな感じだ。さらには巻末に筒井康隆の丁寧な解説が収録されているのだが、これがいまあらためて読むと、筒井康隆の視点の鋭さを見事に切り取っている。
しかし、『日本SF短篇50 1』の時にも書いたし、あらためて僕ごときが書くことでもない気もするけれど、それでもあえて書きたいので書くのだが、半村良はうまいなあ。
ここに収録された「H氏のSF」などは、飲み屋での二人の人物の会話だけで終始して表面上はSFらしい出来事は起こらない。しかし、二人の会話は最初、麻雀の話からはじまりやがてSFっぽい思考実験の内容になっていく。そしてその話がどこに着地するのかというと、麻雀に着地するのだ。落語の世界と通じるような構成なのだが、その話の持って行き方が実にうまいのだ。
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