神奈川県にある架空の都市である葉崎市を舞台としたミステリ。
といっても若竹七海のこの葉崎市シリーズは『プラスマイナスゼロ』しか読んでいないので、シリーズ全体に関しては特に何か言えるようなものはないのだが、『プラスマイナスゼロ』とこの本との間に何か関係があるのかというと同じ市を舞台としているというだけで特に深い関連性はない。
葉崎市シリーズそのものが、コージーミステリの部類に入るので、基本的にどの作品から読んでも楽しむことができるようになっているのだろう。
で、題名が『みんなのふこう』となっているのでコージーミステリにはそぐわない題名のようにも思えるし、そもそも若竹七海自身が人の心の暗部をちらりと垣間見せる、嫌ミステリも書いているので、ひょっとしてひょっとするのかと思ったりもしたのだが、まあそれほど嫌なミステリではなかった。
やたらめったた不幸な目にあってしまうココロちゃんという人物に関して、彼女の友達である女子高生のラジオ番組への投書という形式で物語が進むのだが、ココロちゃんを取り巻く様々な状況が次第に一つの絵となって浮かび上がっていく状況は、ミステリでもあるのだが、単純に物事が合理的に解釈されるわけでもない。そんなところが面白い味を醸し出している。
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