『小鬼の市』ヘレン・マクロイ

  • 訳: 駒月 雅子
  • 著: ヘレン・マクロイ
  • 販売元/出版社: 東京創元社
  • 発売日: 2013/1/29

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ヘレン・マクロイの二大探偵が共演となっているけれども、僕が読んだことのあるのはウィリング博士が活躍する方だけで、もう一方のウリサール署長が活躍する話は読んだことがないので、あまりピンとこない。
実際のところ、翻訳される順番にもちょっとばかり問題があって、まあ翻訳される順番に関しては仕方のないめんもあるけれども、今作ではウリサール署長はシリーズキャラクターとしての位置づけがまだされていなくって、そのせいもあってか実のところ、ウリサール署長自身も犯人扱いされるというか怪しい人物として描かれる場面がある。しかし、オビの惹句にこんなふうに書かれると、いや書かれていなくても、先にウリサール署長が活躍する『ひとりで歩く女』が翻訳されているので、そちらの方を読んでいる人にとっては、せっかくの面白さが少しだけ減ってしまっている。
で、さらにいえば、ウィリング博士もなかなか登場しない。
ウリサール署長はこの物語においては脇役に近く、さらにいえばウィリング博士も表立っては登場しない、代わりに活躍するのは曰く有りげなアメリカ人記者とそのライバル新聞社の女性記者だ。
殺人事件が起こるけれども、物語の雰囲気は本格ミステリというよりはスパイ物、もしくはサスペンスといったほうが近く、語り手が新聞記者であるせいか、どことなくフレドリック・ブラウンのミステリっぽい趣もある。
ヘレン・マクロイがどう意識してウィリング博士が登場する物語を描き続けてきたのかはわからないけれども、こうして何冊かウィリング博士のシリーズを読んでみると、少しづつウィリング博士自身も変化を見せていて、いずれかは書かれた順番で読みなおしてみたいという気持ちにさせられる。

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