『フラッシュポイント:バットマン』ブライアン・アザレロ他

  • 訳:  石川裕人, 御代しおり
  • 著: ブライアン・アザレロ他
  • 販売元/出版社: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2012/9/13

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アメコミを読んだことのない人でも、スーパーマンやバットマンやスパイダーマンくらいは知っているだろう。
しかし、スーパーマンの生い立ちやバットマンの生い立ちとかになってくると知らない人が多くなるはずだ。もっとも、生い立ちなど知らなくっても楽しめるというのがアメコミのヒーロー物の長所でもあるのだが、だからといって生い立ちの部分の設定が適当で構わないかというとそんなことはない。
スーパーマンは崩壊寸前のクリプトン星から両親によって救命カプセルに乗せられてアメリカ合衆国カンザス州に墜落し、そこでケント夫妻に拾われて育ったという設定だし、バットマンは幼い頃に両親を殺されたことから犯罪に対する復讐心が元でバットマンとなった。もっともバットマン関してはこの設定から色々と味付けがされることが多いのだけれども、幼少期に両親が殺されるという設定は基本的に変わらない。
スーパーマン:レッド・サン』はスーパーマンがアメリカではなくロシアに着陸したらどうなったのかという話だったが、この『フラッシュポイント:バットマン』の方は、両親が殺されるのではなく、バットマン自身、つまりブルース・ウェインが殺されていたらどうなったのかというとんでもない設定の話だ。さらにいえばこの本は「フラッシュポイント」というシリーズの中のスピンオフされたエピソードの一つで、メインのストーリー自身も、アメコミのヒーローの一人であるフラッシュが平行世界に来てしまったという設定で、フラッシュの本来の基本設定を改変した話になっている。
で、この本には三つの話が収録されていて、一つ目がバットマンの話、二つ目はスーパーマンの話、三つ目がアクアマンの話でどの話も本来の設定を改変した話になっているのだ。
メインのフラッシュの話はさておき、この本におけるバットマンの話なのだが、誰しも思うのがバットマン自身が子供の頃に殺されてしまったのではバットマンが存在しないのではないのかということだ。しかし、この世界でもバットマンは存在する。ようするに両親を殺された息子がバットマンになるのであれば、息子を殺された父親がバットマンになってもおかしくはないのだ。そしてこの物語ではさらにそこにバットマンでは有名な悪役、ジョーカーの物語が混入され、驚愕というか、こういう設定にしたのであればこれ以外の解釈と結末は考えられないくらいのところに物語は着地するのである。
一方、二話目のスーパーマンの話はどうかというと、一話目のバットマンの話に比べると少し霞んでしまうのだが、こちらはスーパーマンがカンサス州ではなく、本来のスーパーマンが大人になってから活躍の場となる大都会メトロポリスに落ちたらという設定だ。スーパーマンが大都会に落ちたため数万人の死者がでて、しかもスーパーマン自身も軍によって捕獲され、秘密の地下実験場で研究材料にされているというこれまた驚愕の設定なのだ。むろん、囚われの身で極秘扱いなのでこの世界にはスーパーマンという名のヒーローは存在はいない。
三話目のアクアマンになると僕自身、元の話を知らないのでそれほど面白さというのは感じられないのだが、バットマン、スーパーマンの二つの話を読むだけでも十分にこの本を堪能することができるはずだ。
いや、つくづくアメコミの世界は奥が深い。

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