『桜下の決闘 吉岡清三郎貸腕帳』犬飼六岐

  • 著: 犬飼 六岐
  • 販売元/出版社: 講談社
  • 発売日: 2012/11/15

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えーと、これはひょっとして、これでおしまいなのだろうか。
解説を読んでみると、全14話と書かれているし、確かにこの巻の最後の話を見ても、ここで終わるのが綺麗な終わり方でもあるのだが、いっぽうで、表紙裏のあらすじではシリーズ第二巻と書かれているので、続きを期待したい気持ちもある。
とにかく、主人公の造形がユニークで、宮本武蔵に敗れた吉岡道場の末裔という設定であり、宮本武蔵を憎んでいながらも宮本武蔵はすでに故人で、一族の名誉を取り戻すすべも失われてしまっている。
宮本武蔵が二刀流だったことから「二」という言葉が嫌いになり、「二」を使う人物に対しては理不尽なまでの仕打ちをしながらも、実は自分の名前が清三郎ではなく清二郎だったということが今回判明する。自分でかってに改名して清三郎と名乗っていたのだ。
そのいっぽうで、主人公が利息の形として奉公させている、おさえという少女の存在も物語を彩らせている反面、主人公にしろおさえにしろ複雑な想いを秘めているわりに、物語そのものは陰気くさくなく、カラッとしているのだ。もっともその乾き具合が明るさではなく悲しみに彩られているのではあるが。
で、いつまでも続けることが可能なフォーマットでありながらも、最終話、宮本武蔵を否定している主人公が宮本武蔵と同じ状況下に置かれ、どんな結末を迎えることになるのかは興味がある人は読んでもらうこととして、この最終話は都筑道夫の『『女泣川ものがたり』をすこしだけ彷彿させた。

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