『駅と、その町』眉村卓

  • 著: 眉村 卓
  • 販売元/出版社: 双葉社
  • 発売日: 2013/2/14

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ある意味この本は、出版芸術社から出た「眉村卓コレクション 異世界編」のボーナストラックに位置づけられるような話かもしれない。
異世界編に収録された話が、主人公が本来の世界から別の世界へと放り出されてしまう話であり、主役はあくまで異世界へと行ってしまう人間であるのに対して、この物語の主役は人ではなく、町なのである。
いくつかの短編からなるオムニバス形式の物語で、すべての話に登場する人物というのは存在しないし、時系列的にも20年くらいのスパンがあったりもする。唯一例外なのはすべての物語の舞台となる町が立身町という町で、この町でさまざまな不思議な出来事が起こる。ようするに、この立身町という町そのものが異世界なのだ。
といっても、そこで起こる不思議な出来事というのはSFが好きな人間にとってはそれほど突拍子もない出来事ではない。眉村卓のジュブナイル小説に登場するような不思議な出来事と基本的には変わらず、そういう点では、ジュブナイル小説の主人公を大人にした話であるともいえる。
だからこそかもしれないが、何故この町でそんな不思議な出来事が起こるのかという事柄に対しては明確な説明や謎解きというものはされず、あくまで、そこで起こった不思議な出来事に対して関り合いを持った登場人物たちが、どう変化していったのかという事が主眼となるのだ。

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