村田沙耶香
桜木紫乃
宮下奈都
柚木麻子
田中相
有永イネ
うえむらちか
石野晶
ここ数年、僕がちょと衝撃を受けた作家を順不同でリストにあげてみた。見事なまでに女性作家ばかりだ。
では衝撃を受けた男性作家はいないのかというとまったくいないわけではないのだが、受けた衝撃の質が異なるのだ。
ジェイムス・ティプトリー・Jrの短編に「男たちの知らない女」という短編があるのだが、僕がこれらの作家が描いた物語から受けた衝撃というのは、ようするにそういうことなのだ。
で、村田沙耶香は『マウス』を読んだ時に楽しみな作家になったのだが、あいにくとそれ以外はまだ読んでいなかった。文庫化されたら読んでみようと思っていたせいもある。
が、ちょうどタイミングよく最新作が電子書籍化されたので読んでみた。
物語の中で主人公の少女は年を重ねていく。小学生から中学生、そして高校生。子供を子どもとして愛することのできない母親に育てられた主人公は、性欲を自己処理するのと同じ感覚で家族に対する欲求を自己処理する。
その一方で、一匹の蟻を砂糖の入った瓶に入れ育てている少女が登場する。蟻に付けられた名はアリス。無論一匹の蟻が砂糖の瓶の中で長生きするわけもなくいずれ死んでしまうのだが、死ぬと同時に彼女は別の蟻を捕まえてまた再び育てる。だからアリスは時として何代目のアリスと呼ばれる。
彼女もまた、家族という概念を一般的な概念として捉えることのできない人であり、その二人が出会ったことから次第に世界が変わり始める。ただ、ここでいう変わるというのは文字通り世界が変容していくのだ。
衝撃の結末というのはまさにその通りで、この物語はラストになってある種のSFと変化する。むろん、この結末を物理的な世界の変化というSFとして捉えるのか、それとも主人公の内面的な世界だけの変化として捉えるのかは読み手の自由でありどちらでも構わないのだが、少しずつ積み上げてきた物語の世界を最後になってこんな形で終わらせるとは予想もつかなかった。
たぶん、この物語はSFとして読んだほうが面白い。
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