買ってからしばらく積読状態だった。で、そのくせに後で出た『FOR RENT -空室あり-』の方を先に読んでしまったりしたので、なんとも申し訳ない気がしてならないのだが、まあ、気を取り直して、積読の山から取り除くことにした。
日常の謎系の話かと思ったら、中盤になって殺人事件は起こるし、そもそも冒頭からして人間ではない生き物視点で物語が始まるし、細かな章じたてで、そのたびに視点人物も変わり、群像劇という形で構成されている。
こう書くと、何でもかんでも詰め込んで、力任せにまとめあげてみたという感じもするけれども、探偵役である矢上教授は飄々とした雰囲気でもって行動していくので、気楽に読むことができる。
落雷によって陸の孤島と化した大学の研究棟を舞台に、孤島と化した瞬間から大小さまざまな事件が巻き起こり、そして登場人物達はその事態の収拾に翻弄されることとなる。
同時多発的にさまざまな事件が起こるという点で、古くはJ・J・マリックの『ギデオンの一日』、新しいところではR・D・ウィングフィールドの『クリスマスのフロスト』のようなモジュラー形式の発展系とでもいえばいいだろうか。普通、モジュラー形式というと警察が舞台となることが多いのだが、それを陸の孤島と化した大学という場所を舞台にし、日常の謎を散りばめたところにこの物語の面白さがある。
コメント