『地上はポケットの中の庭』が「庭」つながりというゆるやかなつながりがあったのだが、今回はそのようなつながりがないので『地上はポケットの中の庭』と比べると少しばかりまとまりに欠ける。
逆にいえばバラエティ豊かな作品集になっているともいえるけれども、個人的には『地上はポケットの中の庭』の方が好みの作品が多かったかな。
同人誌で発表された作品も2作品収録されていて、その内の一つはさすがに絵が拙いのだが、それでも物語そのものから感じられる味わいは既に田中相の独自の味わいであって、全然ぶれていない。
10年ぶりに合った高校の同級生は性別が変わっていたという「加古里・スズシロ」、日本ではない異国を舞台にし、変化することを恐れる少女の物語である「風の吹く吹く」は題名が素晴らしい。
田中相版『転校生』といった趣もある「恋する太陽系第三惑星地球在住13歳」は同人誌で発表された作品だが、それ故に制約が無いままにはじけきった面白さがある。
そして今回も表紙をめくると、その表紙の裏にみっちりと作品解説が描かれていて、サービス精神旺盛な作者だなあと思うのだ。
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