それぞれの話が単独で完結している短篇集で、謎解きや意外な真相といった部分は薄い話の集まりなんだけれども、今までの道尾秀介の作品とと同様、それぞれの話が相互に微妙に関連しあって、単独で完結していたそれぞれの話の、語られていないその後の部分が次の話で少し触れられるという趣向になっている。
単体で読むと救いのない話が多く、そもそも巻頭の話からして主人公が過去の事件を振り返るといういわゆるスリーピングマーダーというものを扱った話であるけれども、ラストは実に救いのない話で、思わずげんなりしてしまう。続く話も不幸にも人を殺してしまう兄妹の話で、これまたこの兄妹の行末を思うと救いの無さにげんなりしてしまう。
のだが、彼らのその後の顛末は後の話で少しだけ触れられ、ほんの僅かかもしれないが、救いが得られるのだ。
単体で読むと救いのない話が、一冊のまとまった連作短編という感じで読み進めると、どこかしらに救いが与えられるという構成はあざといといえばあざといのだが、うまいよなあと言わざるをえない。ただ、僕がこういう話を道尾秀介に求めているのかといえば、そうではないので、うまいけれども、不満足なままに終わってしまったのだ。
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