『Ebony and Irony 短編文学漫画集』長崎訓子

  • 著: 長崎訓子
  • 販売元/出版社: パイインターナショナル
  • 発売日: 2012/10/19

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イラストレーターの長崎訓子が描いた短編漫画集。
イラストレーターだから漫画もうまいのかというと、うーん、うまくはないかなという感じだ。かといって下手というわけでもなく、やはり絵としては独特の味があってうまいのだが、しかし、この本の面白さは漫画としての面白さというよりもそれ以外の部分にあって、原作として選んだ作品の選択の面白さと、その原作のアレンジの仕方の面白さにある。
この中で星新一の「冬の蝶」しか読んだことはなく、後は「道成寺」はどんな内容なのか知っている程度なのだが、この本のタイトルどおり皮肉に満ちている話ばかりだった。さらに言えばその皮肉が、原作自体にある皮肉とアレンジから生まれた皮肉と、わかりやすい皮肉とわかりにくい皮肉と、千差万別なのである。そもそもまえがきからして素晴らしすぎる。
太宰治の「満願」と星新一の「冬の蝶」と川端康成の「化粧」はほぼ、原作どおりのようだけれども、アンデルセンの「パンを踏んだむすめ」の改変ぶりは凄まじいし、夢野久作の「きのこ会議」は原作通りでありながらも絵的にはSFにアレンジしてしまっている豪腕ぶりだ。
それにしても太宰治がこんな話を書いていたとは知らなかった。

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