鮎川哲也賞を受賞した作品ということで読むと意外と軽い話で拍子抜けしてしまった。
語り手は平凡な高校生の男の子で、探偵役となるのは同じ高校生の女の子なのだが、マジシャンというところが少し変わっている。
ミステリとマジックというのは相性は悪くないのだけれども、この物語におけるミステリが日常の謎という点で、少しばかり分が悪い気もする。
というのも、作中で探偵役の少女がマジックを披露し、語り手の男の子がそのマジックを観て不思議がるというところまではいいのだが、読み手の方もそのマジックが不思議でならないのだ。
しかし、日常の謎の方は謎解きが行われ、すっきりするのに対して、少女が演じたマジックの方はそのトリックが明かされることはない。マジックである以上、手品の種を明かすことはご法度であることは承知しているけれども、明かされない謎と明かされる謎の二つが混在している状態はどうももやもやして仕方がないのである。
作中で、マジックは不思議を楽しむものだと語られるのだが、僕はその不思議を楽しむよりも、やはり解明したいという気持ちのほうが強いのだ。そういう意味では、この物語は僕とはあまり相性の良くない物語なのかもしれない。
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