サイボーグ009には名セリフがいくつかある。
僕が一番好きなのは、やはり「ミュートス・サイボーグ編」のあのセリフだ。
009は、敵であるアポロンに
「お前の能力は加速装置の他になにがある?」と聞かれた時、
「あとは、勇気だけだ」と答える。
そう、009はゼロゼロナンバーの中では一番完成度の高いサイボーグなのだが、特殊能力は加速装置だけだ。それに対して敵のアポロンは手から熱波を放出し、指先からはレーザー光線も出すことができる。どう考えても絶対勝つことのできない敵に対して009は戦わなければならない。そんな勝ち目のない戦いに対しての唯一の武器は勇気だけなのである。
僕がサイボーグ009を読んでいたのは「天使編」までで、そこで一旦シリーズが中断してしまったためにしばらくその後が続かず、結果として僕にとってのサイボーグ009の物語というのはそこで終わってしまっていた。
だから、遺族である息子の手によって小説という形で完結編が書かれたことにあまり関心を持たなかった。それは同時に、サイボーグ009という物語が一連の大きなひとつの物語ではなく、幾つかのエピソードの集合体という構造だったせいも多分にある。
とはいうものの今年になって小説版が完結し、「PEN」という雑誌で特集が組まれ、そして新作が劇場アニメーションとして公開されるとなると少しだけ興味が出てくる。特に新作のアニメーションにおけるゼロゼロナンバーのサイボーグたちのキャラクターデザインの斬新さは驚きだ。
で、ちょうどいいタイミングでこの本が出た。2001年に出たものの増補版という位置づけなのだが、久しぶりに触れるサイボーグ009の世界に対する取っ掛かりとしてはちょうどいいかんじだった。ただ、収録されている図版、特に漫画のコマがものすごく小さいのが唯一の難点だ。
また、久しぶりに読み直したくなった。
コメント