知らないところで随分とたくさん短編、というかショートショートといったほうがいいかもしれないけれども、十ページ前後の枚数の話を書いていたようで、タイトルにもある通り、独創という言葉がピッタリとハマる短篇集だった。
今までの長編のあちらこちらにそこはかとなく潜在していた野﨑まどのギャグの部分だけを抽出して短編に仕上げた話ばかりで、活字のみだけではなく、タイポグラフィを炸裂させた話や、イラストを使った話、ここまでするかと感心するばかりか、よくもまあこれだけのアイデアを出すことができるものだと、恐れ入るばかりだ。
どちらかと言えば設定の妙というべき部分で、こんな設定を考えてみましたので思いっきり悪乗りしてみましたという感じの作品が多いので、どの話も基本的にオチが弱いのだが、その弱さが後を引いて、次の話に誘い込まれてしまう。
で、気がつくとあっという間に時間が過ぎ去っていて、それはまるで最原最早のシナリオを実際に読んだかの如くでもある、というのはちょっと言いすぎか。
悪ふざけの手の込みようは、作品だけではなく、あとがき、そして裏表紙のあらすじにまで手が入っている。
とくに、ヒッグス粒子でお茶を立てようとする「TP対称性の破れ」が、オチはグダグダなんだけれども、そこまでの展開が素晴らしい。
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