『特捜部Q-檻の中の女-』ユッシ・エーズラ・オールスン

  • 訳: 吉田奈保子
  • 著: ユッシ・エーズラ・オールスン
  • 販売元/出版社: 早川書房
  • 発売日: 2012/10/5

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面白そうな話であることは知っていたけれども、じゃあ読んでみようかと思うのはなんだか流行にうまいこと乗せられたような感じがして、そうこうしているうちにシリーズも三作目まで出てしまって、踏ん切りが付きそうで付かない宙ぶらりの状態だったところに一作目が文庫化され、この機会を逃したら、多分読まずに通してしまうだろうと思ったので読むことにした。
とある事件の調査中に部下の一人を死なせ、もう一人の部下を半身不随にさせてしまったことでトラウマとなり仕事の熱意を失ってしまった刑事が主人公。
さらにはこの主人公、奥さんとは別居中でありながら義理の息子とは同居中という複雑な家庭環境で、この主人公が新たに付いた部署は、特捜部Qと呼ばれる未解決事件を扱う部署。そして彼のアシスタントは記憶力抜群でなんでも器用にこなす謎のシリア人。
よくもまあ、これだけ面白くなりそうな要素をこれでもかとつぎ込んだものだと関心するのだが、ではそれが面白いのかといえば、絶妙のさじ加減で、面白くまとまっている。
そもそも、主人公がトラウマとなった事件そのものもまだ解決していなくって、物語が進行するにつれて少しばかりその状況が語られるのだ。だからといってそれがメインの事件の関心を妨げるほどではなく、隠し味程度であるあたりが実にうまい。
もっとも欲を言えば、事件の真相が物語の中盤付近で予測がついてしまうのが難点といえば難点で、もう少し引っ張ってくれていればとも思うのだけれども、今度は逆にタイムリミットサスペンスという趣に変化し始めるので、そのあたりのさじ加減もうまい……のだが、この本を読む前にアンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレムの『ボックス21』を読んでしまっていたのが唯一の失敗で、僕の好みでいえば『ボックス21』の方が面白かったのだ。

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