『式の前日』穂積

  • 著: 穂積
  • 販売元/出版社: 小学館
  • 発売日: 2012/9/10

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ネット上で評判になっていて、絵柄がどことなく吉田秋生っぽい雰囲気を持っていたので読んでみた。
裏表紙をみると高橋留美子っぽい雰囲気もあるけれども、高橋留美子からギャグを取り除いてシリアス路線にしたらこうなるかもしれない。
表題作が巻頭の話で、題名通り結婚式の前日の話なのだが、これといって派手な出来事が起こるわけでもなく、同棲期間の長かったカップルがようやく結婚に踏み切ったという設定でちょっとだけ特別な日の前日の風景というふうに捉えて読んでいたら最後にガツンとやられてしまった。
同じ前日つながりで、メアリ・スーン・リーの「彼らがやって来た前日に」をちょっとばかり思い出してしまった。もちろん「彼らがやって来た前日に」と「式の前日」とでは全然異なる話なのだが、特別な日の前日というのは期待と不安の混じった不思議な日なのである。
その他、どの話も基本的に主役となるのが二人の人物で、それは親子だったり兄弟だったり従兄弟だったりするわけだが、その二人の関係における別れのひと風景を描いていて、どの人物も基本的に善人である。そのせいか読み進めるにつれて既視感を覚えるようにもなってしまうのが少し残念なところかもしれないが、こうして単行本としての全体のまとまりを踏まえた上での結果だとしたら、恐るべき完成度だ。
どおりで評判になるわけだと思った。

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