『モラトリアムな季節』熊谷達也

  • 著: 熊谷 達也
  • 販売元/出版社: 光文社
  • 発売日: 2012/10/11

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熊谷達也というと『邂逅の森』とかマタギを扱った小説を書く作家という印象が強く、なので自分の守備範囲から程遠く、今まで読んで来なかったしこれからも読むことは無いだろうと思っていた。
のだが、ふとしたことで熊谷達也がSF小説をよく読んでいて海外SFにも造形が深いということを知って、急に興味が出てきたのだった。
といっても熊谷達也がSF小説を発表したことがあるのかといえばそうでもなく、この先SF小説を書くのかどうかといえば定かではないし、興味を持ったからどうなるというものでもないのだけれども、熊谷達也の小説を読んでみたいという気持ちになるのは熊谷達也がSFファンだからと以外になにもない。
そんなときに調度良いタイミングでこの本が出た。
あらすじを読むと、『七夕しぐれ』の続編らしいので、そちらの方を先に読んだほうがいいようなんだけれども、とりあえずこちらを先に読むことにした。というのも後半部分をパラパラと読み飛ばすとSFという文字がところどころ出てくるからだ。
半自伝的、というかどこまでが虚構で、どこまでが事実なのかはわからないけれども、それでも題名通りの「モラトリアム」な日々の物語で、内省的で、多分、熊谷達也のファンからしてみると物足りない物語なのかもしれないけれども、熊谷達也の代表作を読んでいない僕にとってみると、ただ単純に日常を切り取っただけの、だからどうした、といいたくもなるような物語であっても、逆にそうであるがゆえに、なんだか微笑ましいというか、フィリップ・K・ディックとか『ソラリスの陽のもとに』とか、SF小説に限っていえば近所の書店よりも自分の本棚の方が揃っていたとか、そういった細かな部分が懐かしさをともなう楽しい物語だったのだ。

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