久しぶりに桜庭一樹の小説を読む。
以前は、新刊が出るたびに無条件に買って読んでいたのだが、ある時から憑き物が落ちたかのように興味がなくなり、読まなくなってしまった。
というか文庫化されるまで待ってもいいかと思うようになった。
で、この小説も、単行本が出た時に書店で手にとって見たけれども、読んでみたいという気持ちにまでならず、さらにいえば、多分この小説に関していえば文庫化されても読まないだろうなと思ったのだった。しかし、それから二年ほど経って文庫化され、アニメ化されるということと、裏表紙の傑作エンターテインメントという文字に、まあ騙されてもいいかという気持ちになり読むことにした。
一読して、うーん、山田風太郎の『八犬伝』を先に読んでいなかったならばもう少し楽しめたのかもしれないが、山田風太郎の『八犬伝』の後で読んでしまうとだいぶ分が悪い。
滝沢馬琴の息子の扱い方、八犬士の扱い方、それらは桜庭一樹のイマジネーションの結果なのだけれども、それがあまり楽しめない。
『南総里見八犬伝』を桜庭一樹が自由に翻案したのはいいが、登場人物に深みがなく、せっかく『南総里見八犬伝』という物語と登場人物たちを使っているのにそれが生きていない。多分それは文庫にして460ページ近くの分量でありながらも、『南総里見八犬伝』という物語を描ききるだけの分量に程遠いせいでもあるのだろう。
せっかく因果という視点でもって『南総里見八犬伝』という物語を語りなおしているのに、もったいない気がする。
コメント