『算法少女』を読み終えて、堪能することができたので、早速『きりしたん算用記』の方を読むことにした。
ちくま学芸文庫で復刊された『算法少女』は原本と同じ挿絵を使っていたのに対して、こちらは新しい表紙絵だ。
『算法少女』は『算法少女』という和算書を書いた少女の物語ということで物語の中でも和算というものが重要な位置を占めていて、和算に対して興味を持っているい人、また和算を知らない人でも楽しむことができる内容だったが、それと同じ感覚でこの本を読もうとするとだいぶ裏切られる。
題名にこそ「算用記」とそれらしい言葉が使われているが、この物語の大部分を占めるのはもうひとつの言葉である「きりしたん」の方だ。
捨てられた一人の少女がキリシタンである女性に助けられ、その女性の元で生活をしていくうちにキリシタンの教えというものを徐々に理解していくという成長小説で、だからといってキリスト教の布教の物語になっているのかといえばもちろそんなことはなく、ごく普通の人として当たり前の倫理的な話でもある。
それ故に、『算法少女』のような物語を期待していたのでがっかりしてしまったわけだが、物語の最後になってようやく、作者が仕掛けた謎があきらかになり、題名にある「算用記」に結びつくのである。
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