舞城王太郎が『ジョジョの奇妙な冒険』の小説を書くと聞いて、どんな話になるのかずっと楽しみにしていた。というのは半分嘘で、だいたいどんな話になるのかは予想がついていた。というのも、かつて、舞城王太郎が清涼院流水のトリビュート小説を書いたことがあって、僕は清涼院流水の小説は読んだことがなかったのだけれども、そのトリビュート小説である『九十九十九』を読んで、舞城王太郎はトリビュート小説であってもあくまで自分のスタンスを貫いてその上でトリビュートを行なっていることを知っていたからだ。
だから今回も、『ジョジョの奇妙な冒険』でありながらも舞城王太郎の世界が支配している『ジョジョの奇妙な冒険』の世界になるだろうことは予想していた。さらにいえば、今回の小説では上遠野浩平と西尾維新の二人も参加していたのだが、この二人の小説はそれほど厚くないページ数だったに対して舞城王太郎がどのくらいの分量を書いてくるのかも期待するところの一つだった。
で、やはり分厚かった。
ジョージ・ジョースターという、『ジョジョの奇妙な冒険』の一連の物語の中でジョースター家の一員でありながら唯一主役として描かれなかった人物を主人公にし、本編では描かれなかった隙間の部分をうまいこと小説にしたのはいいが、『ジョジョの奇妙な冒険』に対する舞城王太郎のいびつな敬意はまともな話には向かっていかなかった。
そもそも『ジョジョの奇妙な冒険』でありながら清涼院流水の小説の主人公である九十九十九を登場させ、さらには二つの時空間を舞台にして、やりたい放題。さまざまな謎が次から次へと矢継ぎ早に現れるのだが、現れた次の行ですぐさま解決されるテンポの速さはいつもの舞城王太郎のスピード感だ。
『ジョジョの奇妙な冒険』のファンで舞城王太郎のファンならば楽しめるだろうけれども、どちらか一方のファン、特に『ジョジョの奇妙な冒険』のファンでしかない人がこの本を読んだら噴飯物だろう。
僕は『ジョジョの奇妙な冒険』を第六部の途中までしか読んでいないのでさすがに終盤の展開についていけない部分があったのだが、「VS JOJO」と名付けられたシリーズにふさわしい物語だと思う。
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