広島県福山市が主催する「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の入選作。
地方の都市が主催する文学賞というのはそれほど珍しいものではないのだが、本格ミステリーだけを対象とする賞となるとかなり珍しい。それというのも福山市出身の島田荘司が関わっているという理由が一番大きいのだが、ではその島田荘司が一人で最終選考をするこの賞の入選作となった『少女たちの羅針盤』がどんな本格ミステリだったのかという点は大いに気になる点でもある。
また、この物語が受賞ではなく優秀作という点にとどまった経緯は解説を書いている島田荘司自身が書いているのだが、評価が別れた理由というのが面白い。作中における、女子高生が立ち上げた演劇グループでの物語展開がいわば少女漫画の世界と同等という点で、少女漫画に触れてきた女性にとっては、新鮮味がなく、少女漫画に触れたことのない島田荘司を含めた男性にとっては新鮮で魅力的に写ったということだ。
確かに言われてみると、この物語での演劇グループ「羅針盤」のメンバーたち四人の描かれ方や、そこで起こる展開は少女漫画の世界ともいえる。
あまり少女漫画は読んでいないのだが、それでも多少なりとは読んでいる僕にとって、あまり新鮮味が感じられなかったのはそういう理由でもあったのだ。
だからといって、ミステリとしてつまらないかといえばそんなことはないのだが、しかし、ミステリの部分よりも演劇グループ「羅針盤」のメンバーたちの物語のほうが面白かったのもまた事実だ。
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