『刺のある樹 仁木兄妹の事件簿』仁木悦子

  • 著: 仁木悦子
  • 販売元/出版社: ポプラ社
  • 発売日: 2012/9/5

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どういう経緯なのかわからないけれども仁木悦子の長編が順調にポプラ文庫で再販されている。
デビュー作である『猫は知っていた』が再販されるのはわからないでもないけれども、続いて仁木兄妹シリーズの『林の中の家』が出て、そして今度は三作目の『棘のある樹』が出た。
僕はあまり熱心な仁木悦子の読者ではなかったので、デビュー作の『猫は知っていた』は読んだけれども『林の中の家』は記憶が怪しい。
シャボテンが登場する話を読んだ記憶があるので、『林の中の家』がポプラ文庫で再販された時には読むのを止めたのだが、ひょっとしたら未読のままなのかもしれない。
そんな中、『棘のある樹』が再販され、こちらの方は確実に読んでいないので、まずこちらを読むことにした。
一読して思ったのは、いい具合に古びているということだ。
それは僕が昭和の時代を知っているからというせいもあるだろうけれども、過剰過ぎない適度な風俗描写で、それゆえにどこか懐かしさを伴っていて、何よりも主人公である仁木兄妹のユーモアと明るさが、ミステリの良心ともいえる形で表されている。
同じような傾向の作風でミステリを書いている現役作家は少なくないのだが、いい意味で古びたミステリとなると仁木悦子くらいしか思いつかないという点では、仁木悦子の作品がこうして再販されている理由もよく分かる。

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