興味のある本なら買ってしまう。
もっとも、最近は収納スペースのことを考えてしまうので昔ほどむやみに買うことは少なくなってきたのだが、それでも買うときは買ってしまう。
そんなことだから後になって、なんでこの本を買ってしまったんだろうと、不思議に思う本も少なくない。
滝本竜彦の『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』もその一冊だ。
まったくの新人の、それも単行本を買うというのは、結構勇気のいることで、自分の直感を信じるということにほかならない。
表紙の安倍吉俊の絵の影響もあったのかもしれないが、安倍吉俊の絵が好きというわけでもないので多分それほど影響はなかった。
今となっては、この本のどこに面白いという直感が働いたのかよくわからないのだが、でも読み終えて面白かったわけで、その時の直感は外れなかったわけだ。
しかし、滝本竜彦はその後、『NHKにようこそ!』を出したところまでは良かったが、その後、エッセイというか実録というか『超人計画』を出して沈黙してしまった。
実際には雑誌で連載をしていたようだが、それはは一冊の本となってまとまることはなかった。
僕は作家自身にはあまり興味を持たないので、『超人計画』は読んでいない。
が、実際のところ滝本竜彦に限っていえば、彼が書く小説以上に彼自身の私生活は面白いらしい。面白いといってしまうのは語弊があるだろうけれども、この本の解説を読む限りでは人生の当たりクジを拾って歩いているかのような人生を送っている。
で、小説の方はというと、十年ぶりに滝本竜彦の小説を読むわけだが、昔と変わらず面白い。
一見すると滝本竜彦でなくても書くことができそうな物語でありながらも細部も含めて、物語を流れる根底のところで滝本竜彦にしか書き得ない物語であり、十年くらいのブランクなど微塵だにしない力があるのだと思う。
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