2015年に読んだ本

去年読んだ本に関しても少し振り返って見たいと思う。
『王妃の帰還』柚木麻子
『起終点駅』桜木紫乃
『歩道橋の魔術師』呉明益
柚木麻子と桜木紫乃は他にも何冊か読んだけれども、この二作が一番。
呉明益は台湾人作家。『歩道橋の魔術師』はミステリでもSFでもなく、さらには1980年代の台湾を舞台としながらもどこか懐かしさを感じさせる不思議な物語。ノスタルジーには国境は無いということなのだろうか、それとも同じアジア圏の物語なのだろうか。今年はもう少しアジア圏の作家も読みたい。
『王とサーカス』『真実の10メートル手前』米澤穂信
『ビッグデータ・コネクト』藤井太洋
『猫ノ眼時計』津原泰水
2015年のベストミステリとしては米澤穂信の一択しかない。
津原泰水の『猫ノ眼時計』は『蘆屋家の崩壊』から始まる一連のシリーズの完結編。先の二作は細かなところは忘れてしまっているのだが、この三作目だけ読んでみると、こんな雰囲気のシリーズだったのかと思わさせられる。改めて先の二作も読みなおしてみたくなる。
『紙の動物園』ケン・リュウ
今年はSF小説はあまり読むことが出来ませんでした。というよりも積読にしたままのものが多い。パオロ・バチガルピもグレック・イーガンもブライアン・オールディスのあれも積読のままなので、全部読んでいたらこのリストもだいぶ変わっていたかもしれません。
『わたしの恋人』『ぼくの嘘』藤野恵美
『トマト・ケチャップ・ス』東直子
『想い出あずかります』吉野万理子
藤野恵美の二作は対となる作品。どちらかといえば『ぼくの嘘』の方が好み。『らいほうさんの場所』が面白かった東直子の『トマト・ケチャップ・ス』は『らいほうさんの場所』と同様に今日マチ子の表紙絵から感じさせる軽いヤングアダルト小説のように見えて実際はそんな軽いものではなくずしりと来る内容だった。石原吉郎の「自転車にのるクラリモンド」が印象的。吉野万理子の『想い出あずかります』は、くまおり純の表紙絵だったのでおもわず表紙買い。以前にも書いたようにくまおり純の表紙絵の場合、表紙買いしても外れることがない。
以下はライトノベル。
『ボーパルバニー』江波光則
『この恋と、その未来。3』『この恋と、その未来。4』森橋ビンゴ
『白蝶記―どうやって獄を破り、どうすれば君が笑うのか -』るーすぼーい
『ボーパルバニー』は見事なまでのウィザードリィ小説だったので読んでいて嬉しくなる。もっとも最初からウィザードリィ小説として書こうとしたわけではなくウィズネタを仕込んでいった結果こういう形になっただけなのかもしれないけれども、こういう正攻法ではない形でウィザードリィの世界を描くというのは予想もしなかったので、べた褒めしたくなる。
森橋ビンゴの『この恋と、その未来。』は最長不倒距離達成作品。少なくとも5巻は出るそうなので、この物語がどういうふうな地点に着地するのかは楽しみに待っていよう。
次は、SFやミステリが好きだといっておきながらこんなものも読んでいなかったのかというもの。読みおえて思うのはどれも傑作だということ。もっともジャック・カーリーの『百番目の男』は傑作というよりも迷作かな。
『死にゆく者への祈り』ジャック・ヒギンズ
『ファイアフォックス』クレイグ・トーマス
『百番目の男』ジャック・カーリー
『猟人日記』戸川昌子
『MOUSE』牧野修

帰らないことを前提とした故郷に棲む兎の、眼のない兎の、月、剣、爪。シーラカンス、ブーゲンビリア

『MOUSE』における詩的な表現は涙が出てくるくらいに秀逸。ブーゲンビリア。
以下はノンフィクション。
『SF雑誌の歴史 黄金期そして革命』マイク・アシュリー
『ミステリ編集道』新保博久
『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』牧村康正、山田哲久
『サムライ 評伝 三船敏郎』松田美智子
『冒険歌手 珍・世界最悪の旅』峠恵子
『市川崑と「犬神家の一族」』春日太一
『SF雑誌の歴史』はようやく二巻目。三巻が出るのはまた十年後くらいなのだろうか。
『ミステリ編集道』読むとあとがきでも書かれているように、「SF編集道」が読みたくなる。
『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』は西崎義展の評伝として面白かった。三船敏郎と市川崑の映画はいつかじっくりと見なおそう。
『ニッポンの個人情報 「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ』鈴木正朝、高木浩光、山本一郎
『老人喰い ――高齢者を狙う詐欺の正体』鈴木大介
この二冊は読んでいて決して楽しくなるものではないのだが、前者は仕事柄、もう一度個人情報というものに関して再認識する必要があったので読んでみた。後者は、自分がだまされないためにというよりも読み物として面白かった。どんなに注意を払っていても本気で騙そうとする相手を防ぐことはできないという結論にしかたどりつかないのだが、それでも騙そうとする側にも世代間の意識に違いがあるというのが興味深い。
『知ろうとすること。』早野龍五、糸井重里

ぼくは、じぶんが参考にする意見としては、「よりスキャンダラスでないほう」を選びます。「より脅かしてないほう」を選びます。「より正義を語らないほう」を選びます。「より失礼でないほう」を選びます。そして「よりユーモアのあるほう」を選びます。

読み物としても面白いけれどもガイドブックとしても役に立つのが以下の三冊。
『読み出したら止まらない! 女子のミステリー マストリード100』大矢博子
『読書狂の冒険は終わらない!』倉田英之、三上延
『今夜、珈琲を淹れて漫画を読む 漫画の時間 2時間目』いしかわじゅん
今年も早くもいろいろと衝動買いして積読にしまっています。

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