『高く手を振る日』黒井千次

  • 著: 黒井 千次
  • 販売元/出版社: 新潮社
  • 発売日: 2012/8/27

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生き物は何もしなくても老いていく。だから老いることはとても簡単だ。
しかし、良い老い方というのはとても難しい。なにしろ良い老い方というのはどういう老い方なのかわからないからだ。
それはいつまでも健康であることだろうか。
それとも家族とともに仲良く暮らすことができることだろうか。
どちらも良き老い方ではないと思う。
いつまでも健康であることは老いていないことであり、家族とともに仲良く暮らすことは老いることとは無関係だ。
健康でなくなり、家族とともに暮らすことができなくなった時点で、人は老いるのだと思う。
この本の主人公は、妻に先立たれて以来、一人暮らしの生活をしている。時折、娘が様子を見に来るのだが、基本的には一人っきりだ。
とりたてて生活には困ってはおらず、肉体的にも健康な状態。一方で、もう一人の登場人物は、登場した当初は主人公よりも健康的で恵まれた生活をしているのだが、物語が進むに連れて老いていく。
恋をして少しだけ若返る主人公と、恋をしながらも老いていくもう一人の主人公。二人が若ければもっと違う結末を迎えたかもしれないのだが、齢を重ねた二人の恋はお互いの年月を重ねた分だけの節度があり、つまるところは70年という歳月をどのように生きてきたかという結果なのだ。
だから老いるということは簡単でありながらも、とても難しいのだと思う。

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