『鷲たちの盟約』アラン・グレン

  • 訳: 佐々田 雅子
  • 著: アラン グレン
  • 販売元/出版社: 新潮社
  • 発売日: 2012/7/28

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  • 訳: 佐々田 雅子
  • 著: アラン グレン
  • 販売元/出版社: 新潮社
  • 発売日: 2012/7/28

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歴史改変物なのだが、1933年のフランクリン・ルーズベルト暗殺未遂事件が、未遂でなかったとしたらというところが改変のポイントで、ルーズベルトが暗殺された結果、急進的なポピュリストであるヒューイ・ロングが大統領となったアメリカが舞台だ。
ポピュリズムそのものは必ずしも悪いものではないのだが、40%近い失業率という中、更にはヒトラー率いるドイツが西ヨーロッパをほぼ占領してしまっているという状況可において、巨大なドイツに対抗するためには、一時的であっても時間をかせぐためにドイツと協定を結ばざるを得ない事態であり、それはファシズムを受け入れざるを得ないという意味でもあった。
そういう重苦しい設定でかつ、上下巻という分量なのだが読み始めてみると意外と軽い。
ここでいう軽さというのはエンターテインメントとしての比重の大きさということだ。
主人公は警部補見習いとなったばかりのポーツマスの警察官。警部補見習いとなって初めて起こった殺人事件の調査をしていくうちに次第に大きな陰謀に巻き込まれていく展開は基本中の基本ともいえる展開なのだが、主人公自身はごく普通の警察官でありながら、主人公を取り巻く人間が何かしらの権力または組織的な力を持っていたりして、何かと主人公を守っているあたりが物語としての軽さでもある。つまり、主人公が危機的な状況に陥っても誰かしらが助けてくれるのだ。
もっともそれは主人公が自分の考えでもって行動しているようにみえても、つまるところ主人公よりも上位の存在によって操られているにすぎないということを意味するので都合よく助けられたりしてもそれほど気にはならない。
むしろ、大いなる陰謀に翻弄されていく中で主人公が、自分が何をするべきなのかということに気づき、そしてそれに向かって進み始めようとする物語の終盤、歴史改変物としてはちょっと変わった雰囲気を味わうことができるのだ。

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