二巻目になって前巻にあった毒が減り、一般受けしやすいちょっと痛い人をコミカルに描いた話になってしまったな、と思ったのは最初の三話目までで、それ以降は前巻と同様に強烈な世界を描いてくれていた。
人は、その場の雰囲気や自分の感情によって自分の表情を変化させるのだが「金魚」主人公はそれがうまくできない。いつでも無表情で、そしてころころと表情を変えることができる人たちに、なぜそんな顔ができるのか疑問に思い続けている。そして彼女の疑問は最後まで解決されない。ではどこにこの物語の面白さがあるのかといえば、最後のコマである。その一つ手前のコマで彼女は「ふふ、かわいい」とつぶやく。その時彼女はどんな表情をしているのだろうか。それが最後のコマである。
「こんなにたくさんの話したいことがある」はある種の言語SFでもある。この話で登場する女の子はいつでも多種多様な言葉を頭に吸収しており、そして複数の話題を渾然一体となった混じり合ったままの文章でしゃべるのである。複数の話題を同時にしゃべるという様子を視覚的にみせられるのは不思議な世界だ。
一方で、純粋なホラーである「こわいものみたさ」も面白い。怖がりだけど、怖いものを確認せずにはいられない少女が友達と廃墟となった一軒家に肝試しに行く。見開き1ページを使った大コマと彼女の一言。何があったのかわからないまま終わるラストといい、ホラーとして傑作だ。
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