『アルカード城の殺人』ドナルド&アビー・ウェストレイク

  • 著: ドナルド&アビー・ウェストレイク
  • 販売元/出版社: 
  • 発売日: 2012/6/30

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扶桑社ミステリって一ヶ月に一冊くらいしか出版しないわりに非常にマニアックな本を出してくる。
今回のこの本も、純粋なミステリ小説ではなく、ミステリー・ウィークエンドという推理イベントで行われた犯人当てイベントを小説化したものだ。
まあたぶん、これを書いたのがドナルド・E・ウェストレイク夫妻じゃなかったら翻訳されることなどなかったに違いないが、わずか200ページにも満たない紙面にウェストレイクの前書き、スティーブン・キングのいかにも楽しんでいる序文、そしてページの合間にイベントが行われた時の写真などを多数盛り込んで、肝心のミステリに割く紙面などほんのわずかになってしまっているのに謎解きそのものは結構手が込んでいて、読者が謎を解くための手がかりは容疑者の供述のみでありながらも、徐々に隠された背後の出来事が明らかになっていくあたりなどはそれなりに楽しむことが出来る。
トランシルヴァニアの森に建つアルカード伯爵の古城を舞台にし、あからさまに吸血鬼を意識させるような設定でありながらぎりぎりのところでオカルト寄りになるところを回避させているあたり、作者自身が楽しんでいる様子がかいま見られるし、真相として語られる容疑者たちのその後の身も蓋も無さもまた楽しい。

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