少し変った少女もしくは少年が恋をすることによって少しずつ考え方や行動が変化していく、という物語はそれほど珍しくはないように思えるのだが、いざ、そういう物語を探そうとするとなかなか見つからないのはそういう物語をあまり読んだことがないせいかもしれない。
誰かを好きになるということは、当たり前のことだけれど、他者と関わりあいになるということで、それまで他者との関わりあいをしてこなかった人間であればあるほど、他者と関わりあうことによって自分自身も変化していく。
読み始めて、少し嫌な予感がした。
確かに、前巻までの状態で、それ以降の物語を書くというのは難しい。前巻までとはうって変わって主人公たちはごく普通に恋愛をしているのだ。
しかし、森橋ビンゴのことだからこのままではなく少しひねりを加えてくるんじゃないかと期待をしていたのだが、結局のところ最後までそのまま押し切ってしまった。
なんとなく釈然としないまま、作者のあとがきを読んだら、作者もこのことに自覚していたのだった。
ちょっと変った少女が恋をしてそしてそれが順調に進んでいくのであれば、ちょっと変った少女はごく普通の恋愛をする少女に変化していくのだ。
それは当たり前のことであって、そして多分、不満の声が出ることも自覚しながらも、それを最後まで押し通して描ききったのである。
まあ、いまさらこういう、ど真ん中の恋愛小説を読むということに対しての恥ずかしさってのはあるけれども、森橋ビンゴのファンなのだから仕方ない。
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