近未来、札幌市は壁に囲まれていた。
その壁の中で生活する主人公たちはある日、未来から過去へと向かう少女と出会う。
壁に囲まれた街というとシオドア・R・コグスウェルの「壁の中」という短編小説を思い出す。
壁に囲まれた町に住む少年たちは、壁の向こう側を目指さなければならない。という決まりごとはないけれども、青春の甘酸っぱさというか、そこに未来から過去へと向かうタイムトラベラー、しかも少女が組み合わさるとなれば、少年が壁の向こうを目指すのは必然だ。あらすじだってそんな感じをかもしだたせている。
しかし、三つの章とエピローグで構成されるこの物語のなかでそんな甘酸っぱさが描かれるのは最初の一章だけでしかも苦い結末だ。
まあ苦さも別に構わない、青春の苦さだ。
問題はそれ以降の展開である。
第二章では一章から二十年近い年月が経過し、第三章ではさらに千年以上の年月が経過する。
その経過する時間の流れに比例する形で、最初のエピソードからは創造できないくらいにSF度が高まっていく。
そして札幌市が壁に閉じ込められた理由も、過去へタイムトラベルする少女の謎とタイムトラベルの原理なんかも全て説明される。まあこれで説明できない方がおかしいんだけど。
やたらめったらアイデアを詰め込んで、ちょっとばかり詰め込みきれなくってほころびが目立つけれども、エピローグの、それまでの展開を台無しにするかのような、あるいは賛否両論の否の方が多そうな着地の仕方は、割と好きだ。
読み終えて心に残るのは理屈よりも登場人物たちの思いなんだよね。
コメント
サッポロが舞台とは、、興味深いですね。