『マンガのあなた SFのわたし』が1970年代編となっていたので1980年代編とかが出るだろうと思っていたら、やはり出た。
今度は『コトバのあなた マンガのわたし』だ。
前巻が漫画家であるはずの萩尾望都が自分を「SF」として相手を「マンガ」としていたのに対して、今回は自分を「マンガ」とし、相手を「コトバ」としている。
それほど深い意味は無いのかもしれないが、1970年から10年という月日を隔てた萩尾望都の心境のありかたというか、考え方の変化というものが自身を「マンガ」としたのかもしれない。
前にも書いたとおり、僕は萩尾望都の漫画をほとんど読んでいない。なので、萩尾望都の対談を読んでも萩尾望都自身の発言よりも、対談相手の方の発言の方が興味深かった。吉本隆明との対談では吉本隆明が『2001年宇宙の旅』よりも『宇宙戦艦ヤマト』の方を高く評価しているのが面白かったし、光瀬龍との対談で、光瀬龍が1980年代半ばにはSFを書くことを止めようとしていた発言をしていたのも興味深かかった。もっとも光瀬龍は『SFマガジン 1998年2月号』に「暁の砦」という短編を書いていて最後までSFを書くことは止めなかったんだけどね。
それ以外には、小笠原豊樹との対談が思いのほかの収穫だった。おそらく小笠原豊樹の対談というのはかなり珍しいんじゃないだろうか。なにしろ小笠原豊樹がレイ・ブラッドベリについて語っているのである。
そして6月6日、レイ・ブラッドベリが亡くなった。
少年時代にブラッドベリの物語に触れることが出来たのは幸運なことだった。
でも、『猫のパジャマ』の時にも書いたように、ブラッドベリの物語は僕にはもう輝いていない。
この本の中で、小笠原豊樹と川又千秋と萩尾望都がブラッドベリについて語っていて、そして読者はブラッドベリをいつしか卒業していくものだというのがよくわかった。
さて、この後、1990年代編が出るのかどうかはわからないが、この1980年代編は萩尾望都に興味が無い人でもかなりの収穫のある本だった。
コメント
Takemanさん、こんにちは。
『パステル都市』で検索してたら久々にこちらのブログにたどりつきました。
『マンガのあなた SFのわたし』は読んだのですが『コトバのあなた マンガのわたし』はまだです。なのになぜこっちにコメントするかというと、書店で野田秀樹との対談をイッキ読みしてしまったからです。
プチコミックスの第二期萩尾望都作品集が次々に刊行されていたころ、野田秀樹の劇団夢の遊眠社も最盛期で、どっちも好きだった私は今回の対談の初出本も持っているのですが、つい店頭で読みふけってしまいました。私的には前巻での漫画家のみなさんとの対談より刺激的でした。
そのうち他の方との対談も読みたいですが、その書店では法条遥『リライト』を選んでしまいました。タイムトラベル物。なかなかおもしろかったです。Takemanさんの感想も聞いてみたいですね。
汗さん、こんにちは。
そうですね、私も前巻よりはこちらの方が読んでいて刺激的でした。90年代編が出ることを期待しています。
法条遥の『リライト』は気になっているんですが、まだ買っていません。
機会があれば読んでみたいのですが、未読の本がたくさんなので闇雲に本を買うのはこれでもちょっと控えているんです。