『連環宇宙』ロバート・チャールズ・ウィルスン

  • 訳: 茂木 健
  • 著: ロバート・チャールズ・ウィルスン
  • 販売元/出版社: 東京創元社
  • 発売日: 2012/5/11

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『無限記憶』や『クロノリス』を読んだときに感じたとおり、<時間封鎖>三部作としてみた場合、『時間封鎖』の直系的な面白さというのはほぼ無く、やはりロバート・チャールズ・ウィルスンはロバート・チャールズ・ウィルスンで、『時間封鎖』だけが異色だったということだった。
というか、三部作の完結編としてではなく、これ単体でも通用しそうな感じでもある。
あまり手放しで喜べないのは『時間封鎖』におけるど派手なアイデアに対してそれを受け止めるだけの結末でなかったという部分よりも、『時間封鎖』の時にあった、逆境においてもなんとかしてその逆境を乗り越えようとする人類の前向きな力強さが無かったせいだ。
今回は二つのパートに分かれているが、一方は謎解きに収支するだけだし、もう一方の世界は狂信的な人々が妄信的な行動をして自滅していくだけで、語り手はそれに対して反抗するけれども結局のところたいした抵抗もできないまま終わる。
明るい未来で終わると思ったら虚無的な世界で終わってしまって、まあそれはそれでSF的なビジョンとしては良いのだけれども、やっぱりなんだか腑に落ちないというかこんな結末を期待していたわけじゃなかったんだと言いたくもなる。予想外のビジョンを見せてもらったという部分では満足できるのだが、やっぱり素直に褒めることができない。
SFとしてのテーマの部分が登場人物たちの個人的な問題と重なり合って相互に絡み合うという点では、機本伸司と同系統なのではないかと思ったが、機本伸司の場合はSFとしての部分が個人にすりかわってしまうのに対して、ウィルスンの場合はすりかわらないので、『夏の涯ての島』のイアン・R・マクラウドと同質ともいえるのだが、イアン・R・マクラウドよりもちょっとだけ不器用という感じがする。

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