『さらば、やさしいゆうづる』有永イネ

  • 著: 有永 イネ
  • 販売元/出版社: 講談社
  • 発売日: 2012/4/6

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全四編。
「ひとつめは木曜になく」は、毎週木曜日になると、人の負の感情が一つ目の気味の悪い化け物という形で見ることが出来てしまう、はるかとじゅんの二人の高校生。
片方はそれを毛嫌いしながらも受け入れ、負の感情を持つ当人を助けようとするが、片方はそれを認めながらも、何もしようとはしない。
負の感情が見えてしまうという状況で、ともに違う立場をとりながらも、二人寄り添う形で日々を送っているのだが、ある日を境に片方は、それが見えなくなってしまう。
だからといって何かが解決するわけでもなく、それでも二人は生き続けていかなければならない。
ちょっとしたトリックが仕掛けてあって、終盤にそれがわかるようになっている。そこでさらに話がちょっとだけだが一転するのがうまい。
個人的に好きなのは表題作で、その人が一番望んでいるものが入っている箱という不思議な箱の存在と扱い方がすばらしい。
「なき顔の君へ」はちょっと心にきてしまった。恵まれた者と恵まれなかった者。そんな二人が家族としてともに生活をしていかなければならないということは両者にとってつらいことなのだ。だた、物語としては救いがあるのがうれしい。
「はたらくおばけ」はうって変わってコメディ。だけれどもここにも喪失という物語がある。
『地上はポケットの中の庭』といい、これといい、ITANって、ちょっと僕好みの漫画を出してくれそうな感じだ。

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