書店で、辻村深月の文庫本を手に取ろうとするといつも思うのは、もう少し薄い本を書いてくれるとありがたいということだ。
ちょっと手に取ってみようかと思うには分厚すぎてしまう。そのせいで、いまだにデビュー作を読むことが出来ずにいるのだ。そんなわけで、今回手に取ったのは厚いけれども上下巻になっていないこの本だった。
しかし、文庫にして500ページを超えていながらも読み始めると一気に読みきってしまうだけの面白さがあるのは確かで、今回もそうだった。
主人公は小学四年生の男の子。少しだけ不思議な力を持っている。
あるとき、主人公たちの学校で飼育しているウサギが殺されてしまうという事件が起こる。犯人はすぐに捕まるのだが、主人公の友達がその現場を発見し、ショックで心を閉ざしてしまう。
そして、反省のそぶりも無い犯人に対して、主人公は自分の持っている力を使おうと決意する。
主人公の持つ力は言葉で相手を操るという力だ。しかし、それは万能ではない。
ある一定のルールが存在し、それは論理ゲームと同等のルールで、そのルールの範囲内において力は効力を発揮する。
そして自分の持つ力について学びながら同時に、自分が犯人に対してこの力を使おうとするのは、何のためなのかを学ぶ。
復讐なのかそれとも罰を与えるためなのか。
そして、その力を行使した後、自分の心は満足するのかそれとも満足できないままでいるのか。
反省すらしない犯人に対しての復讐、あるいは罰、どうすれば自分の気が晴れるのか、あるいは自分たちが事件を乗り越えてその先へと進んでいくことができるのか。
最終的に主人公がどのような形で自分の力を行使するのかという部分もそうなのだが、途中の過程もスリリングで考えさせられる。
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