ぜんぜん知らない作家だったのだが、題名と表紙の絵に惹かれるものがあったので読んでみることにした。
全四編、とある女子高に通う高校一年生の物語だ。ただし、最後の話はそれから七年後の話となっている。
それぞれの話の語り手となる主人公は異なるのだが、登場人物は相互に関係がある。というのも彼女たちは同じクラスの一員なので関係があるのは当たり前だ。しかしそれが物語の構成上、何らかの仕掛けに結びついているというわけではない。
この物語の面白さは、登場人物たちのキャラクター造詣の部分だ。
最初の話はいじめの話である。
いきなり重苦しい内容なのだが、この話の特異な点は、いじめる側の視点で語られていて、なおかつ、その原因となる部分が、いじめられる側にもあり、最後まで行き着かなければどうしようもない状況に主人公たちが追い詰められていく様子が描かれているという点だ。
いじめる側、いじめられる側、どちらが一方的に悪いというわけではなく、彼女たちは学校という社会の中でどうすることもできないままにお互いに傷つけあうのである。
ある意味、これは非常にリアルなのだ。
そして、作者のキャラクター造詣の面白さは、話が進むにつれ明確になっていく。
それまでの話で脇役だった人物が主役になると、それまで描かれなかった彼女たちの内面が描かれ、彼女たちの二重性が浮き彫りにされていく。いや単なる二重性というだけではない。彼女たちはステレオタイプの人物ではないということなのだ。
また一人読むのが楽しみな作家が増えてしまった。
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