『らくだこぶ書房 21世紀古書目録』クラフト・エヴィング商會

  • 著: クラフトエヴィング商會
  • 販売元/出版社: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/4/10

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読み終えて、これは文庫ではなく、この本が出た当時に単行本の方を買うべきだったなと痛感したのだが、2000年の12月にこんな本が出ていたことすら知らなかったので、いまさら悔やんでもどうしようもない。
とはいうものの、2000年の12月にこの本を読んだとしても最後に仕掛けられたネタに対してどのくらいニヤリとさせられたかといえば、それほどニヤリとさせられはしなかっただろうから、こうして文庫化されたものを見過ごさずに読むことができたということで満足するべきだろう。
作中ではもうじき21世紀を迎えようとする20世紀末の時代。クラフト・エヴィング商會の元に、21世紀の時代から、らくだこぶ書房という古書店の古書目録が届く。
らくだこぶ書房からすれば過去に出版された古書ばかりだが、いずれも発行年は2001年以降のものばかり。つまり古書でありながら、まだ発行されていない未来の本なのだ。
架空の本の紹介といえば、ボルヘスやレムが思い浮かぶが、クラフト・エヴィング商會の場合は装丁という武器がある。
さまざまな未来の書物が、その書物に合った装丁の一冊の本として写真つきで紹介されるのだ。
髪型の七三分けの本は七対三の比率で分割された装丁になっているし、卓球詩人を名乗る2人の詩人による詩集は真ん中分けの本で、交互に開き読むことであたかも言葉による卓球のラリーをしているかのように読むことが出来る装丁だ。
もちろん装丁が奇抜なだけではない。紹介されている本の内容も、読んでみたくなるような面白さに満ち溢れている。
たとえば、老アルゴス師と百の眼鏡の物語は、百眼のすべてに老眼鏡が必要になりながら、「寝ずの番」を続ける老警備員と、彼のために「百の眼鏡」を探す老ヘルメスというギリシア神話の神々の老境の時代を描いた物語だ。
さわりの部分を読んだだけでも、ちょっと読んでみたくなる。

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