『メタリック』別唐晶司

  • 著: 別唐 晶司
  • 販売元/出版社: 新潮社
  • 発売日: 1994/02

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ありがたいことに作者のサイトでPDFの形式で無料で公開されているのだけれども、僕はどうにもパソコンのモニターで電子書籍を読むというのが得意ではない。
iPadかKindleを使えば読みやすくなるのかもしれないが、今のところもう少し様子見だ。
というわけで、この本を読むために古書を探し続けていたわけだが、ようやく帯つきの手ごろな物が見つかったので買って読んだ。
PDFで公開されているものは著作権的な問題もあるので表紙も帯も収録されていない。
まず、この帯の裏が衝撃的だった。
殲滅セヨ、醜悪ナルモノヲ!
本文の157ページにあたる部分の上半分くらいがそのまま載っているのだが、いきなりこの言葉だ。
脳だけを取り出して生き延びさせるという話だと思っていたのに、それからはまったく想像も出来ない言葉と、展開だ。
主役は二人の男性。
一人は頭脳は優秀だが生まれつき体が弱く、てんかんから始まって網膜剥離や化骨性筋炎とさまざまな奇病に悩まされ続ける天才科学者。
もう一人は、彼の友人。
生まれつき自分の肉体に裏切られ続けてきた天才科学者にもとうとう最後の時がくる。腎細胞癌に罹り、余命三ヶ月ほど。
そこで天才科学者は、彼の友人が猿の脳を取り出して生存させる実験に成功していたことに注目し、自分の脳を献体として提供し、裏切り続けてきた自分の肉体を捨て、脳だけとなって生き延びようとする。
天才科学者のおれと、友人のわたし。物語は相互の視点で交互に語られていくのだが、おれの視点のパートが圧巻。徹底的な肉体への嫌悪とメタリックな物に対する愛情が一切のオブラートに包まれること無く吐き出されるのだ。
で、脳だけを取り出して生存させることには成功するのだが、入力器官も出力器官も存在しない。作中においては純粋生存と呼ばれる状態。「おれ」は閉ざされた世界の中だけで生き続けることとなりその結果、ルサンチマンが肥大化して暴走する終盤は圧巻だ。
万人受けはまったくしないだろうけれども、傑作だ。

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