『スコーレNo.4』が書店員によるツイッターのつぶやきで増刷がかかりヒットしたとき、読んでみようかという気持ちはあったけれども、別にあわてて読むこともないなと思いそのままにしていたら、結局いまだに読むきっかけがつかめず読まずじまいのままになってしまった。
それでも宮下奈都という作家の存在は頭の片隅にとどまっていたので、今回、『遠くの声に耳を澄ませて』が文庫化されたとき、読むならば今しかないなという思いが頭によぎった。
12編の短編集、で、どの話も短い。
しかし、それぞれの短編において登場人物が緩やかに重なりあうことで、次の話、次の話へと先へ進むごとに、先に読んだ話が少しずつ広がってくる。うまいなあと思う。
そして、宮下奈都の描く世界というのは僕とはかけ離れた世界だ。
この本には「遠くの声に耳を澄ませて」という題名の短編は収録されていない。しかし、どの話もこの題名のとおりの話なのだ。
僕のいる世界とはかけ離れた世界から、宮下奈都が語りかけてくる物語は、声となり、そして僕はそれに耳を澄ますように読み進めていく。遠くの声に耳を澄ますことで、それがいつか近くになるのかもしれない。
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