『それはまだヒミツ 少年少女の物語』今江祥智編

  • 編: 今江祥智
  • 販売元/出版社: 新潮社
  • 発売日: 2012/1/28

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子供のころから本を読むのが好きだったが、子供のころは児童文学と呼ばれるものは読まなかった。
まあ、いきなりSFとミステリの洗礼を受けてしまったのでそれはそれで仕方の無いことだったのだが、逆に大人になって児童文学の面白さに目覚めてしまった。
よくできた小説はどの年代の人が読んでも面白いわけで、子供向けとして書かれている児童文学であっても大人が読んでも面白いのはあたりまえのことだし、大人はかつては子供だったことがあったわけで、面白さを読み取るだけの感性は残っているはずなのだ。
この本は、もともとは『新潮現代童話館1・2』として2冊刊行されたものから14編を選んだ本なのだが、そうした理由は、多分、元本が今江祥智と灰谷健次郎による編集だったので、今江祥智が選んだ分だけを取り出したのかもしれない。
元本が1992年で、つまりどの作品も今から20年以上前の作品となるわけなのだが、ぜんぜん古びていない。
巻頭の「グッド・オールド・デイズ」からすでにそこに描かれる子供たちの世界に引きずり込まれる。
「なんの話」における、主人公の質問に対する教頭先生の答えも素敵だし、「オーケストラの少年」に登場する老人が作曲した音楽の正体にも驚かされる。
現実に即した話もあれば非日常の世界が混在する話もある。長新太の「ハードボイルド」は透明人間が登場する短い話しながらも題名どおりハードボイルドな物語になっているあたりはもはや脱帽するしかない。
こうなってくると、収録されなかった残りの物語も読みたくなってくるのだ。

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