『ねたあとに』長嶋有

  • 著: 長嶋 有
  • 販売元/出版社: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/2/7

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ミステリ小説に屋敷の見取り図が付いていると、その見取り図が謎解きにはほとんど役に立たないことが多いのも知っているくせにわくわくしてしまう。
この本にも、舞台となる別荘の見取り図が変なこだわりを持つ細かな説明つきで巻頭に掲載されている。もちろん、その見取り図が役に立つわけでもないのだが、あるだけでなんとなくうれしくなる。
ある意味、長嶋有+ブルボン小林としての集大成。
といえば聞こえはいいけれども、実際のところは今までの残りかすを集めて小説にしたようなもの。と書くといきなり貶し過ぎか。
長嶋有の楽屋裏をのぞいているというのが一番近いだろう。
コモローという小説家の別荘に集まり、夏のひとときを過ごす人々の様子を描いた物語だが、その小説家は「ジャージにて」という小説で「オーエ賞」を受賞する。さらにはトイレコモローなる別名義でも執筆しているし、「ムシバム」というブログも持っている。
どう考えても作者本人にしか他ならないのだけれども、作中での印象は薄い。それもそのはずで、語り手は別にいる。
そして別荘に集う人々は、そこで何をするのかといえば、主人公一家が考案したゲームをだらだらとするだけなのだ。
そのゲームというのが、マージャンパイを使った競馬だったり、ルールを増改築してより複雑になった軍人将棋だったりと、少し変なゲームばかりだが、作中で説明されるこれらのゲームのルールに、思わず面白そうだと感じてしまった人であれば、この小説を読んで不満に思うことなど無いだろう。

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