<疫病神>シリーズの四作目。一作目の『疫病神』が新潮社、二作目の『国境』が講談社、三作目の『暗礁』は幻冬社ときたのだが、四作目は新潮社に戻った。
一作目の『疫病神』が面白いと感じた人であれば、今回も裏切られることはまったくない。
文庫版『疫病神』の帯に書かれた『疫病神』語講座のような部分は健在だ。
「こら、もういっぺんいうてみい」
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すみません、もう一度言って下さい。
「気障なせりふは懲役で習うたんかい」
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その失礼な言葉は、受刑している間に覚えられたのですか?
「足元見ずに突っ張らかってたら、どぶ板を踏み抜くで」
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今は調子がいいかもしれませんが、そのうちによくないことが起こるかもしれませんね。
「殺すぞ。おどれら」
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あなた方を殺したい気持ちになってきましたよ。
イケイケヤクザの桑原と、自称「建設コンサルタント」の二宮の二人の凸凹コンビが宗教法人相手に大阪、東京、名古屋、京都とめまぐるしく駆け回って暴れまわる。
四作目ともなるとパターン化してくる部分もあるが、そこは作者も手抜かりがなく、読者が読みたい部分はパターン化しても、ところどころで新しさを盛り込んで、あきさせない。
そして今回は暴力団排除条例が施行される前の作品となってしまった。次回作が書かれるのかどうなのかはわからないが、極道である桑原はかまわないが堅気である二宮の方はおいそれと係わり合いを持つわけにもいかなくなってしまった。
凸凹コンビの活躍を楽しみにしている身としてはなんとも複雑な心境でもある。
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