藤子不二雄というと子供向けの漫画を描くというイメージがあるのだけれども、僕は子供のころ、藤子不二雄の漫画は『ドラえもん』以外、読んだことはなかった。
自分のほうこそ子供なのに、自分よりも子供向けの漫画のように思っていた節もあり、それは変に僕自身が大人びていたせいかもしれないし、絵柄そのものがあまり好きではなかったせいかもしれない。
その証拠に、ハリイ・ハリスンの『宇宙兵ブルース』の表紙や挿絵も好きではなかったし、ジェイムスン教授シリーズも読まなかった。まあ、ジェイムスン教授シリーズを読まなかったのは藤子不二雄の絵が嫌いだっただけではないけれども。
しかし、不思議なもので大人になるにつれて藤子不二雄の漫画が気になるようになり始めたのだ。
とはいっても、僕が好きになり始めたのは藤子・F・不二雄のほうだ。
藤子・F・不二雄のSF短編漫画のほうを少しずつ読んでいるのだが、藤子・F・不二雄の漫画を調べていると話題に上るのがこの『モジャ公』だ。藤子・F・不二雄の最高傑作という人も多いこの漫画なのだが、ひとつだけ大きな難点があった。
『モジャ公』が描かれることになったいきさつもさることながら、作者自身が後に修正を加えたりしてその結果、すべての話が完全に収録された完全版『モジャ公』は存在していない。
すべての話を読もうとするのならば、出版社の異なる『モジャ公』を何冊も集めなければならないのである。
そんなわけで、読みたいという気持ちは高ぶりつつもいつしか完全版が出てくることを祈り続けていたら、いがいとあっさり出てくれた。
一部の単行本では未収録だった話や作者が手を加える前のバージョン、雑誌掲載時の表紙など、おそらくは完全版にふさわしい収録内容となっている。
で、肝心の物語のほうはというと、多くの人が傑作というだけのことはあり、最初の展開こそ子供向けのドタバタギャグ的な話でありながら、中盤から後半にかけては作者がある程度、描きたいように描いたのか、随所にしっかりとしたSF的な仕掛けが物語りに施されていて、確かにこれは藤子・F・不二雄の傑作のひとつだと認識することができた。
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