『鳥はいまどこを飛ぶか』を読み終えて、少し時間をおいて読もうかと思ったのだが、続けて読むことにした。
山野浩一のこれだけの分量の作品を一気に読むというのはなかなかしんどい面もあったけれども、苦労しただけの満足感もあった。やはり二冊一気に読むのがいいだろう。
巻頭の「メシメリ街道」は本来ならば読んでいくうちに不安な気分に襲われなければいけないのかも知れないけれども、これ以上はないというかお手本のような不条理小説で、それゆえに読んでいて、こういう小説が読みたかったというある種の安堵感と満足感がある。
タイムトラベル、超能力、電子頭脳といったSF的なガジェットを使いながらも、インナースペースに向かっていく展開は、久しく感じたことのなかったベクトルを含んだ物語で、ニューウェーブSFが苦手だったとはいえ、日本SFにはこういう系統の作品が書かれていた時期があり、わりと読んでいたんだなあと思った。
特に、終末テーマSFでもある「Tと失踪者たち」は、原因不明、何の前触れもなく人間が消えていき、人口の大半が消えてしまった日本が舞台で、わずかに生き残ったというかまだ消え去っていない人々の姿を描きながらも、どのような地点に着地させるのかと思ったら、、これ以上はないような見事な地点に物語が着地したので驚いた。
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