『嫉妬事件』乾くるみ

  • 著: 乾 くるみ
  • 販売元/出版社: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/11/10

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ミステリ小説というのはだいたいにおいて作者の頭の中で考え出された事件を元に書かれるものだけれども、ごくまれに実際に起こった事件を元に書かれることもある。
エドガー・アラン・ポーの「マリー・ロジェの謎」からして現実に起こった事件をモデルにして書かれている。
この物語は京大のミステリ研で実際にあったとされる事件を元にしたミステリだけれども、ミステリ作家というのはおかしな人間ばかりなのであろうか、竹本健治の『ウロボロスの基礎論』も同じ事件をモデルにしている。
ミステリ研で起きた事件がごく普通の事件であればまあ、いろいろな人が謎解きに挑戦してもかまわないし、この事件にしても謎解きが好きな人同士で集まっていろいろと推理するのであれば別に文句も無い。
しかし、京大のミステリ研で起きたこの事件でもって一本の小説を、しかも長編を書いてしまうというのは、それだけの魅力的な事件なのかとか、それでいいのかと問いつめたくなる気持ちも起こる。
『ウロボロスの基礎論』は読んでいないのでわからないけれども、この小説に関していえば、くだらないなあと苦笑しつつも最後まで読み切ってしまうだけの不思議な力はあるのもまた事実で、馬鹿馬鹿しくもきっちりと馬鹿馬鹿しく構成された物語だった。

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