単なる復刊かと思っていたら二編以外はまったく異なる収録作となった別物のアンソロジーだったので、旧版を持っている身としてはありがたいことなんだけれども、表題作以外はどんな話だったのかすら覚えていないので、単なる復刊でも別に支障は無かったというところが、歳はとりたくないものだなあと思う点だ。
編者による解説がこれがなかなか興味深く、「冷たい方程式」に関する元ネタ探しの騒動といったエピソードは、事実を知らされれば、ジョン・キャンベルの方針とか仕事っぷりを知っているのでとりたてて珍しい話ではないけれども、トム・ゴドウィンの作品自体が日本ではそれほど翻訳されていなく、作風らしい作風というものがよくわからない作家なので唯一翻訳された長編『宇宙のサバイバル戦争』の作風が本来の作風だったというのは新たな発見だった。
破滅物ばかりを書いている印象のあるジョン・クリストファーの「ランデブー」はこういう話も書いていたのかと思う反面、すごく切なく、身にしみる話で、登場する二人の人物の気持ちが正反対であるところがうまい話だなあと思う。
題名でなんだか損をしている気がする「危険! 幼児逃亡中」は八歳でも幼児なのかと変なところで気づかされた話だが、読んでいて、キングの作品よりもジェローム・ビクスビイの作品の方を思い出していた。あちらは防ぐことのできなかった世界の話で、こちらは防ぐことができた世界の話。
シマックの「ハウ=2」はジャック・ウィリアムスンの「組み合わされた手」っぽい展開になるのかなと思っていたらあれよりは陰鬱な結末にはならないところで終わったのはシマックらしい暖かさの現れなんだろうか。
50年代SFにもまだまだ面白い作品があるんだなあと思わせられたアンソロジーだった。
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