『結晶世界』J・G・バラード

以前に書いたことだけれども、中学生くらいの頃、破滅物が好きだった。といっても今でも破滅物は好きなのだが、破滅物の一つとしてJ・G・バラードの「破滅三部作」を読もうとしたことがあった。特に『結晶世界』はベスト10もしくはベスト20くらいに入る傑作だったので、手に入れた時にはそれはもうワクワクしたのだけれども、あらすじを見てみるとなんだかワクワク感が下がってしまった。一頁目を開いて読み始めようとするけれども、読もうとするたびに期待感が下がり始めてしまう。結局そのまま一頁目以降を読み進めることができずに積読状態と化してしまった。
『狂風世界』を読んだことで、今ならば『結晶世界』も読むことが出来るのではないかと思い、挑戦してみることにした。
で、読み始めてみるとやはりあまり面白くない。
いや、それなりに面白く読むことは出来るのだが、世界が結晶化し始めた理由はすでに知っているし、バラードの主眼はそんなことではないのでその部分を楽しもうとしても分量にして数頁で終わってしまう。
主人公の自身のドラマにしても、同僚の奥さんと不倫したまではいいが癩病を移してしまったあげく逃げられてしまう話で、しかも主人公は不倫相手の奥さんのことが忘れられずに居場所を探し出して追いかけていく。で、追いかけたはいいが途中で知り合ったジャーナリストの女性と関係を持ってしまう。
まあ中学の頃に読んだとしたら、さぞかしつまらない話だっただろう。
しかし、SFとして面白いかどうかは別として、物語の構成というか、どうでもいいように思える主人公自身の物語と結晶化する世界、そして脇役におけるもう一つの愛憎物語とが綺麗に組み合わさって、結晶化する世界のイメージといい、バラードがやろうとした、そしてやり遂げた事柄というのは素晴らしい世界で、確かにこれは傑作だとしかいいようがない。

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