しばらくほったらかしにしてあったのだけれども、わりと目の届く場所におきっぱなしだったので、さっさと読むことにした。
過去に日本では『不思議な少年』という題名で翻訳されていたのだけれども、実はこの作品、マーク・トゥエインの関係者による最初と最後が似ているだけの贋作だったということがわかって、こっちが本物だということで出版されたのがこの『不思議な少年44号』。
マーク・トウェインの晩年の作品で、マーク・トウェインといえば法螺話を書いている印象が強いが、晩年は悲観的になりペシミスティックな作品を書くようになってしまったらしい。
というわけで、本のあおり文句には「圧倒的な面白さに満ちた」などと書かれているけれども、まったく面白くない。
作者がろくに推敲もしなかった状態のままなので、話がうまく繋がっていない部分があったり、そもそも、「圧倒的な面白さに満ちた」小説でありながら、解説で中盤付近までのあらすじが書かれている時点でなにかおかしいだろう。面白いのであればそんなあらすじなど必要はないはずだ。
しかし、ストーリーテリング的な面白さはないけれども、部分的みれば細切れで面白さはある。ストーリーテリングの下手な作家が書いた20世紀初頭のSF小説としてみれば、この小説に投入されたアイデアは面白いし、この徹底的なまでに悲観的な結末はちょっとだけ感動した。
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