ムーミンシリーズは八冊だといわれていたけれども、実はもう一冊、エピソード0とでもいうべき『小さなトロールと大きな洪水』という話があった。しかし今までは、講談社文庫には収録されてはおらず、青い鳥文庫にだけ収録されていたので少しばかり収まりが悪かったけれども、今回の新版でようやく講談社文庫の一冊として出ることとなった。
しかし、初期の習作といっても過言ではない話なので『ムーミン谷の十一月』を読んだ後ではその差は愕然とするくらい大きい。
ムーミンシリーズの一冊というよりもおまけとして見た方がいいだろう。
とはいうものの、ニョロニョロに心惹かれて、ムーミントロールとムーミンママを置いて旅に出ていってしまったムーミンパパを探すという物語は、その設定そのものがどうかと思うけれども、ムーミンシリーズの初期にあった明るさがあり、明確なハッピーエンドを迎えるのでこれはこれで微笑ましい話になっている。
個々のエピソードを見てみると、深読みしようと思えば深読みできるだけの様々な含みというものがあり、習作とはいえどもさすが、トーベ・ヤンソンが書いたものだと感心するしかない。
これでとうとう、小説版のムーミンシリーズは読み終えることとなってしまった。少し寂しいけれども、また何年かしたら読み直してみようと思う。多分また新しい読み方ができるのかも知れない。
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